看護部を核とした
経営改善事例紹介Introduction of Managerial Betterment by Nursing Department
病棟再編、病床利用率上昇の
カギは看護部にある!
病棟再編や、病床利用率向上には看護部の力がカギになります。変化に戸惑う職員の理解を得て変革を進めていく事、断らない患者受け入れ、スムーズな院内ベッドコントロール、退院支援の充実化など、今後の病院経営を考えると、地域の医療ニーズにあった自院の病院機能・病床機能を明確にし、ヒト・モノ・カネ・情報といった自院の資源を最大限に有効活用することが求められています。
そんな時代だからこそ、看護部を核とした経営改善が重要になります。
こんな方向けのサービスです
地域の医療ニーズにあった自院の病院機能・病床機能を明確にし病棟再編を考えている病院、そして病床利用率向上を目指す病院向けのサービス紹介です。
弊法人が“ともに汗をかかせて頂いた”事例を抜粋します。
地域の医療ニーズにあった自院の病床機能を考える~
「当院は急性期病院」のこだわりが、病棟再編を妨げる!
地域ニーズにマッチしていない病院・病床機能の維持(意地)は病床利用率向上を妨げ、看護師の配置等の資源を非効率にしていることがあります。医療圏や地域分析などの外部環境分析を行い、あわせて自院に入院している患者の平均在院日数や看護必要度、職員人数等の内部環境分析を行うことで、地域のニーズと自院に求められている役割を分析することができます。病院経営のためには病床利用率の向上はとても重要ですが、急性期病床の病床利用率を上げるために在院日数を延長させても、入院単価は下がったり看護必要度も下がったり、DPC対象病院の場合には効率性係数が下がったり、長期的な視点では、不利な状況を生み出しかねません。だからこそ、地域のニーズを把握し、自院に求められている病床機能を見極め、統合再編の検討のうえ、適切に病床利用率を向上していく必要があります。
事例紹介:病床数は200床以上、年間の救急車搬送件数は約1,800台、地域医療支援病院の承認を受けている病院に地域包括ケア病棟が必要か?
やはりまずは将来推計人口、近隣病院の病院・病床機能などの外部環境分析が重要です。当該対象病院は外部環境分析の結果、該当医療圏における急性期病床の過剰、回復期病床の不足がありました。さらに、自院に求められている役割としては、1次救急を含めた救急搬送患者の受け入れ、紹介状のない患者の受け入れなど、近隣の急性期病院が担っていない役割をしっかりと果たしていく事でした。(※ただし、令和2年度診療報酬の改定により、初診時選定療養費が義務化されています。)
よって、急性期一般病床の空床はしっかり確保しつつも、軽症患者の救急受け入れや在宅復帰支援のニーズに対応するため、地域包括ケア病棟の開設は必要な病棟再編であると考えられました。
しかし、立ちはだかった課題は2つ。1つは「当院は急性期病院である」という病院経営陣のこだわり、および地域包括ケア病棟にする場合、廊下幅や病室の床面積の要件を満たす必要があることから、病床数の削減が必要なことによるダウンサイジングへの強い抵抗でした。地域包括ケア病棟の開設に至るまでへの説得には、経営陣、特に管理者の説得が必要でした。
いよいよ、病院の方針が決定され、発表されてからは、当然のことながら、現場の医師・看護師からも不安の声がありました。「どういった患者を転棟させていくのか」、「どういった患者を地域包括ケア病棟に直入させていくのか」と、様々な声が聞かれましたが、この点における大きな対応策は2つでした。
1つは、同様の病院を視察に行く事、
2つめは看護部の統率力です。
とくに2つめの「看護部の統率力」は様々なことに影響を及ぼします。院内最大の職員数を抱える看護部が前を向くかどうかで、道のりは大きく変わってくるのです。病院の方針として地域包括ケア病棟の開設が決まったら、「どうやるのか」を考えていく事ができるかどうかです。「〇〇はどうするの?」「こんな不平不満、不安がある」「やっぱり無理なんじゃないか」などを羅列するだけでは、課題も不安も解決しません。開設までのスケジュールを見据え、1つ1つの課題に対し「どうするのか」と案を出し合い解決していく事が重要であり、そのカギを握るのは間違いなく看護部です。
当該対象病院では、地域包括ケア病棟の病棟師長に抜擢された師長はとても前向きな師長でした。我々のお伝えする情報、資料、データなどからしっかりと患者のニーズ、地域のニーズ、地域包括ケア病棟の役割、そこから見えてくる当院の役割、当院に地域包括ケア病棟を開設する意義、そして使命感を理解し、自分自身の言葉で病棟職員に伝え、看護職員が抱える不安や疑問としっかり向き合い、開設にまで導いてくれました。
不平・不満の声が高まった時こそ、看護管理者のブレない姿勢が軸を定めます。地域包括ケア病棟を開設することで見えてくる課題は、意外と地域包括ケア病棟の開設をやめることで解決する課題ではなく、院内の仕組み、コミュニケーション、意識などの課題であることが浮き彫りになることがあります。
決して簡単な決断でも、簡単な過程でもない病棟再編は、看護部が核となる病院経営改善の取り組みの1つであると言えるでしょう。
事例紹介:ミッション「病床利用率の向上」~ベッドコントロールの重要性を認識せよ~
昨今ではケアミックスの病院も増えてきました。ケアミックス病院では、院内の円滑なベッドコントロールが何よりも重要です。ここでの事例対象病院では、慢性期病床機能の病棟師長により円滑な院内ベッドコントロールの運用を妨げていた事例です。
病棟師長の中には、病院の経営や他の病棟との協働よりも、自身の病棟を守ること、自身の病棟のスタッフを守ることに重きを置く方がいます。そのため、院内ベッドコントロールでの転棟受け入れに強い抵抗を示したり、また他の病棟師長への圧力が生まれ、転棟をしにくくする構図が生まれていることがあります。特に規模の小さい病院では、経験年数の長い病棟師長が看護部長よりも発言力を持っていることもあり、ケアミックス病院において強みを発揮するために何よりも重要なベッドコントロールに支障をきたしていることがあります。
ケアミックス病院において例えば院内における後方機能的な慢性期病棟の師長が、空床があるにも関わらず患者の受け入れに難色を示せば、なかなかベッドコントロールがうまくいきません。慢性期病棟で患者の受け入れが促進されなければ、とうぜん入院患者の受け入れを行う病棟(急性期病床や地域包括ケア病床等)では患者の受け入れのキャパが生まれません。同時に、スタッフの感情的な側面から考えても、病棟間における不公平感からギスギスとした雰囲気を生み出していまいます。
ケアミックス病院におけるベッドコントロールは非常に重要です。そしてその要となるのは、看護部であり、ここでもやはりその統率力が問われます。今までの方法や当該病棟のスタッフの方々の声を聞くというのは非常に重要なことだと思います。しかしながら、院内のベッドコントロールが機能するというのは、ケアミックスの中小病院にとっては要になります。ある病院では病床稼働率向上に、受け病床運用会議の見直し、入退院関連マニュアルの見直し、さらにはレスパイトの受け入れ基準までを見直しました。しかし中でももっとも大きな影響力があったのは、看護部長の覚悟でした。特に発言力の強い病棟師長からの不平や指摘などに対し、「各病棟は満床になるまでは患者受け入れを断らないように」という指示が出され、看護部の方針が明確に打ち出されたのです。そこから病床利用率は一気に上がりました。
現場を知っている看護部長は、時に現場の看護師の声に耳を傾けすぎてしまうことがあるように感じます。優しい看護部長ほど、その傾向が強いのかもしれません。しかし、看護部長は院内最大の職員数を抱える看護部のトップであり、経営を左右しうる組織を束ねるトップです。院長・事務長と3枚岩になり、病院経営を考えていくべき立場の方であることは間違いありません。
地域の医療ニーズにあった自院の病床機能を有しているにも関わらず、病床利用率が上がらない原因は、院内に潜んでいるかもしれません。特にベッドコントロールにおいては、看護部が核であり、その運用を妨げる原因は案外、こういったところに潜んでいたりするのです。病床利用率が上がれば現場から不平不満が出るかもしれません。しかしながら、院内最大の職員数である看護部は、病院の経営改善の筆頭者になるべきであり、妨げになってはならないことです。
病院経営改善の多くは、看護部がカギを握ります。ベッドコントロールもまた、看護部を核とした経営改善のひとつと言えるでしょう。
さいごに
院内最大組織である看護部は経営改善において大きな影響力を持ちます。今回は病棟再編と院内ベッドコントロールの事例を紹介いたしました。看護部を核にした経営改善について、いつでもご相談ください。